「全国転勤のある働き方がつらい」「転勤したくないという理由で転職するのは甘えなのではないか」と悩む人もいると思います。
私自身、新卒で全国転勤のある大手企業に入社し、最初は群馬県へ配属されました。
最初の配属先には、友人も親戚もいませんでした。知らない土地で生活と仕事を一から作る経験には、今振り返っても価値があったと思っています。
一方で、勤務地を会社に決められ続ける働き方や、当時の自分が積みたかった経験とのズレには、次第に違和感を持つようになりました。
私の結論は、転勤したくないことを理由に転職を考えても、それだけで甘えではないということです。
全国転勤にはメリットがあり、前向きに楽しめる人もいます。ただ、働く場所は仕事内容だけでなく、家族、住まい、子育て、配偶者の仕事、将来の人生設計にも影響します。
この記事では、全国転勤のある会社で働いた私が感じたメリット、自分には合わなかった理由、転職を決める前に整理したいこと、候補企業で確認する項目を解説します。
転勤したくないから転職するのはあり?私の結論
全国転勤が嫌だから転職することは、それだけで甘えとはいえないと私は考えています。
ただし、転勤したくないと思ったら、すぐに会社を辞めればよいという意味ではありません。
重要なのは、次の点を自分なりに整理することです。
- 転勤の何が自分に合わないのか
- 現在の会社で状況を変えられないか
- 転職によって何を変えたいのか
- 自分や家族は、どこでどのように暮らしたいのか
- 今後どのような仕事や経験を積みたいのか
転勤を負担に感じる理由は人によって違います。
引っ越しそのものが負担な人もいれば、家族との別居、子どもの転校、配偶者の仕事、勤務地を自分で決められないことに不安を感じる人もいます。
私の場合、全国転勤だけが退職理由だったわけではありません。
自分が若いうちに積みたかった経験、会社が用意していたキャリア、将来の暮らし方など、複数の違和感が重なった結果として、転職を選びました。
全国転勤にはメリットもある
全国転勤のある働き方が自分には合わなかったからといって、全国転勤そのものに価値がないとは思っていません。
働く場所が変わるからこそ得られる経験もあります。
知らない土地で生活と仕事を一から作る経験
私は新卒で入社した大手企業で、最初に群馬県へ配属されました。
群馬には友人も親戚もおらず、私にとって縁もゆかりもない土地でした。住む場所を整え、地域を知り、生活そのものを一から作る必要がありました。
仕事でも、その地域のお客様とゼロから関係を作らなければなりません。
会社名による信用はありましたが、実際に仕事を続けていくには、自分自身が相手と向き合い、少しずつ信頼してもらう必要があります。
知らない土地へ入り、新しい人と関係を作る経験は、その後の仕事でも役立つものでした。
環境への適応力や経験の幅を広げられる
地域が変われば、顧客の特徴、商習慣、人との距離感、仕事の進め方も変わります。
複数の土地や拠点で働くことで、次のような経験を得られる場合があります。
- 新しい環境へ適応する力
- 地域ごとの顧客や市場への理解
- 異なる考え方を持つ人との人間関係
- 複数拠点で働いた経験
- これまで接点のなかった人との人脈
同じ場所で働き続けるだけでは得にくい経験もあるため、環境の変化を成長の機会として楽しめる人には、全国転勤が合う可能性があります。
転勤を前向きに楽しめる人もいる
新しい地域で暮らすことや、知らない場所へ行くことを楽しめる人もいます。
勤務地へのこだわりが強くなく、さまざまな地域で経験を積みたい人にとって、全国転勤はキャリアの選択肢を広げる機会になるかもしれません。
企業によっては、住宅補助、転居費用、転勤手当などの制度を設けている場合もあります。ただし、制度の有無や内容は企業によって異なるため、求人票や就業規則、会社からの説明を確認する必要があります。
全国転勤が良いか悪いかではなく、その働き方が自分の価値観や生活に合うかが重要です。
私には全国転勤のある働き方が合わなかった
群馬で得た経験には価値がありました。
それでも、当時の私が積みたかった経験と、会社が用意していたキャリアの時間軸にはズレがありました。
新卒で縁のない群馬へ配属された
群馬への配属後、私は新しい土地で仕事を覚え、お客様との関係を作りながら働いていました。
地方で働くこと自体が嫌だったわけではありません。知らない土地で生活し、仕事を一から始めたことは貴重な経験でした。
一方で、当時の私は、若いうちに東京や大阪などの大都市で、より多くの人や仕事に触れながら経験を積みたいと考えていました。
東京や大阪なら必ず成長でき、地方では成長できないということではありません。
あくまで、当時の自分が20代で積みたかった経験と、実際に置かれた環境が合っていなかったということです。
同期や友人との経験差に焦りを感じた
東京で働く同期や大学時代の友人は、私にはスピード感のある仕事をしているように見えました。
たまに研修で同期と会うと、担当している仕事の規模、経験の種類、仕事が進む速さに違いがあるように感じることもありました。
一方の私は、群馬で地道に経験を積んでいました。
その経験に意味がなかったわけではありません。それでも当時は、「このままでいいのだろうか」「若いうちに積みたい経験から遅れているのではないか」と焦っていました。
今振り返ると、勤務地だけの問題ではなかったと思います。
自分がどのような経験を積み、どのようなキャリアを作りたいのかが明確になり始めたことで、会社が用意するキャリアとのズレを強く感じるようになったのだと思います。
悩みが重なる時期に体調を崩して入院した
キャリアや今後について悩みが重なっていた時期に、私は体調を崩し、約2週間入院しました。
もちろん、群馬勤務や全国転勤そのものが入院の原因だった、と言いたいわけではありません。
ただ、キャリアや将来について悩みが重なっていた時期だったことは確かで、入院したことが自分の働き方を見直す大きなきっかけになりました。
それまで私は、会社から与えられた場所と役割の中で頑張ることを優先していました。
しかし入院を経験したことで、「自分はこの先、どこで、どのように働きたいのか」を真剣に考えるようになりました。
先輩の転勤を見て、将来の暮らしを自分で決めにくいと感じた
結果を残しても勤務地は自分で決められなかった
職場では、若手社員だけでなく、30代や40代で仕事の結果を残している先輩が、突然全国各地へ転勤する姿も見ていました。
会社に必要とされ、仕事で評価されていても、次にどこで働くかを本人だけでは決められません。
その姿を見ながら、私は自分の10年後、20年後を想像しました。
仕事を続けた先に一定のキャリアは見えても、自分がどこで暮らしているかは分からない。
私はそこに、次第に大きな違和感を持つようになりました。
転勤そのものよりも、自分が働く場所や暮らす場所を、長期的に会社の判断へ委ねる働き方が自分には合わなかったのだと思います。
全国転勤は退職理由の一つだった
私が大手企業を辞めた理由は、全国転勤だけではありません。
- 若いうちに積みたい経験とのズレ
- 会社の中で見えてきた将来像
- 勤務地を自分で決めにくい働き方
- 今後のキャリアに対する疑問
- 体調を崩したことをきっかけに働き方を見直したこと
こうした複数の要因が重なり、外の世界を見たいと考えるようになりました。
全国転勤は唯一の退職理由ではありませんが、将来への不安を強めた重要な要素の一つでした。
退職時に「どこへ行っても通用しない」と言われた
送別会で退職を強く否定された
退職することを決めた後、最終日に身近な先輩たちが送別会を開いてくれました。
ただ、その場は私の転職を前向きに送り出すような雰囲気ではありませんでした。
そこで私は、次のような趣旨の言葉をかけられました。
「若くして辞めて、どこへ行っても通用しないぞ」
「仕事をなめるな」
当時の私は、かなり悔しい思いをしました。
今となっては、先輩たちがどういう意図で言ったのかは分かりません。
ただ、当時の私には、「若くして大手企業を辞めること自体を否定された」という感覚が強く残りました。
大手企業を若くして辞めることや、安定した環境を離れることが、周囲から「逃げ」「甘え」「根性がない」と見られる場合もあります。
それでも私は、1年目や2年目だから辞めてはいけないとは思っていません。
大切なのは勤続年数だけではなく、次のことを自分なりに考えることです。
- なぜ辞めたいのか
- 現在の環境で何が合わないのか
- 次の環境で何を変えたいのか
- 自分はどのような人生を送りたいのか
短期離職を積極的に勧めるつもりはありません。
一時的な感情だけで辞めるのではなく、現在の会社で変えられることや、転職によって失うものも考える必要があります。
それでも、自分の人生を考えた結果として環境を変えることまで、勤続年数だけで甘えと決める必要はないと思っています。
選んだ道を自分で正解にしようと思った
送別会で強く否定されたとき、私は悔しい気持ちと同時に、次のように思いました。
「だったら、この選択を自分で正解にしていくしかない」
選んだ瞬間に、その道が正解か不正解かは分かりません。
実際に環境を変えれば、思いどおりにいかないこともあります。私もその後のキャリアで、会社の日本市場撤退や、事業とのミスマッチを経験しました。
それでも、その経験を次の選択へ生かすことはできます。
後から振り返ったときに「あの経験があったから今がある」と思えるように、その後の行動を積み重ねていけばよいと私は考えています。
周囲の意見をすべて無視する必要はありません。自分では見えていないリスクを教えてくれることもあります。
ただし、最終的にその人生を歩くのは自分です。
周囲の意見を参考にしたうえで、最後は自分が納得できる方向を選ぶ必要があります。
37歳・妻子ありの今は、全国転勤のある会社を選ばない
若い頃は、自分が経験を積む場所を選びたかった
20代の頃に全国転勤へ違和感を持った理由は、自分が経験を積む場所を自分で選びたかったからです。
より多くの人や仕事に触れ、自分の知らない世界を見たい。そのために外の環境へ進みたいと考えていました。
転勤が嫌だったというより、会社が決めた一つのキャリアだけでなく、自分で選んだ場所で自分なりのキャリアを作りたかったのだと思います。
現在は、家族が暮らす場所も自分たちで決めたい
現在の私は37歳で、妻と子どもがいます。家族で暮らすために戸建て住宅も購入しました。
若い頃とは、転勤によって影響を受ける範囲が変わっています。
- 妻の仕事
- 子どもの生活環境
- 家族で過ごす時間
- 現在の住まい
- 保育園や学校
- 通勤時間
- 家庭全体の生活設計
子どもと一緒に過ごせる時間は限られています。
その時間を大切にしたいと考えているため、子どもとの時間を確保できない会社や、家族の生活拠点を大きく変える可能性がある会社で働くことは、現在の私には合いません。
家族ができたから、突然全国転勤が嫌になったわけではありません。
以前から持っていた「自分の人生を自分で選びたい」という価値観が、現在は家族単位の人生設計へ広がったのだと思います。
全国転勤なしは現在の私にとって前提条件
現在、私が求人票を見るときは、比較的早い段階で次の項目を確認します。
- 勤務地
- 自宅から通勤できるか
- リモートワークが可能か
- 転居を伴う転勤があるか
全国転勤のある会社は、現在の私にとって基本的に転職先の候補になりません。
これはすべての子育て世代に全国転勤のない会社を勧めるという話ではなく、私と家族の現在の条件です。
転勤以外にも、仕事内容、事業、年収、働き方、家族との時間など、転職先を選ぶ基準は複数あります。
何を優先し、どこまでなら譲れるのかを整理したい人は、次の記事も参考にしてください。
転勤を理由に辞める前に整理したいこと
転勤したくないと思っても、すぐに退職を決める必要はありません。
まずは、自分が抱えている問題と、転職によって変えたいことを整理しましょう。
本当に嫌なのは転勤の何か
「転勤したくない」という言葉だけでは、自分が何に困っているのかが分からない場合があります。
例えば、次のうち何が大きな問題なのかを考えてみてください。
- 引っ越しにかかる手間や費用
- 家族と離れて暮らす可能性
- 配偶者が仕事を続けにくくなること
- 子どもの転園や転校
- 購入した住宅を離れること
- 知らない土地で生活すること
- 勤務地を自分で決められないこと
- 転勤の時期や頻度が分からないこと
- 自分が積みたいキャリアとのズレ
本当に困っていることが分かれば、退職以外の方法で解決できる可能性も見えてきます。
現在の会社で変えられる可能性があるか
会社によっては、次のような制度や相談方法が用意されている場合があります。
- 勤務地限定の雇用区分
- 全国型から地域限定型への変更
- 異動希望制度
- 上司や人事との面談
- 家庭事情を踏まえた転勤時期の調整
- リモートワーク
- 転居を伴わない部署への異動
利用できる制度は会社によって異なります。
転職を決める前に、就業規則や社内制度を確認し、上司や人事へ相談できることがないか考えてみてもよいでしょう。
転勤を断れるかどうかは、雇用契約、就業規則、勤務地の限定、個別事情などによって異なります。
まずは会社の制度や労働条件を確認し、判断に迷う場合は労働局などへ相談する方法もあります。
転職によって何を変えたいのか
転勤を避けることだけで転職先を決めると、別の部分でミスマッチが起きる可能性があります。
転職後に変えたいことを、転勤以外の条件も含めて整理しましょう。
- 勤務地だけを変えたいのか
- 仕事内容や役割も変えたいのか
- 興味を持てる事業に携わりたいのか
- 年収や福利厚生を維持できるか
- リモートワークは必要か
- 家族との時間をどの程度確保したいか
- 今後どのような経験を積みたいか
転勤がないことは重要な条件になり得ますが、それだけで自分に合う会社だと判断することはできません。
転職先で転勤の有無を確認する方法
転勤のない会社へ転職したい場合は、「転勤なし」という言葉だけを見るのではなく、制度と実際の運用を確認する必要があります。
求人票と労働条件を確認する
求人票では、主に次の項目を確認します。
- 採用時の勤務地
- 就業場所の変更範囲
- 転居を伴う転勤の有無
- 転勤する可能性がある地域
- 勤務地限定の雇用区分があるか
- リモートワークの可否
- 出社頻度
採用時の勤務地だけでなく、入社後に就業場所がどこまで変更される可能性があるかも確認しましょう。
面接やカジュアル面談で実態を確認する
求人票だけで分からない場合は、面接やカジュアル面談で質問します。
例えば、次のような聞き方が考えられます。
- この職種では、転居を伴う異動はありますか
- 過去にはどの地域への異動がありましたか
- 転勤はどの程度の頻度で発生していますか
- 異動時に本人の希望や家族事情はどのように確認されますか
- 勤務地を限定して働ける制度はありますか
- 制度上の転勤可能性と、実際の運用に違いはありますか
転勤について確認することは、自分勝手な質問ではありません。
入社後の生活へ大きく影響する条件だからこそ、選考中に認識を合わせておくことが重要です。
制度だけでなく実際の運用も調べる
同じ「転勤あり」の会社でも、実態は異なります。
- どの職種が対象になるのか
- 全国のどの地域が対象なのか
- どの程度の頻度で行われているのか
- 本人の希望は確認されるのか
- 勤務地限定制度を利用できるのか
- 実際にどのような社員が転勤しているのか
企業公式サイト、採用ページ、求人票、面接、社員情報など、複数の情報源を組み合わせて確認しましょう。
候補企業について何を調べ、公開情報で分からないことを面接でどう確認するかは、次の記事で詳しく整理しています。
まとめ|転勤するかどうかも、自分の人生から考える
全国転勤が嫌だから転職することは、それだけで甘えではありません。
全国転勤には、知らない土地で働き、新しい人間関係を作り、環境への適応力や経験の幅を広げられるメリットがあります。新しい場所で暮らすことを楽しめる人もいます。
一方で、私には全国転勤のある働き方が合いませんでした。
若い頃は、自分がどこでどのような経験を積むかを自分で選びたいと思っていました。
37歳で妻子がいる現在は、家族がどこで暮らし、子どもがどこで育つかも含めて、自分たちで人生を決めたいと考えています。
転勤を理由に転職を考えるなら、まずは次の点を整理してみてください。
- 転勤の何が自分に合わないのか
- 現在の会社で変えられることはないか
- 転職によって何を変えたいのか
- 転勤以外に優先したい条件は何か
- 自分や家族は、どのような人生を送りたいのか
選んだ瞬間に、その道が正解かどうかは分かりません。
それでも、その後の行動によって、選んだ経験を将来へ生かしていくことはできます。
私自身、大手企業を辞めたときには、「どこへ行っても通用しない」という言葉をかけられました。
それでも今振り返ると、あのとき自分の人生について真剣に考え、外へ出る決断をしたことを後悔していません。
周囲の意見を聞くことは大切です。ただ、最後にその人生を歩くのは自分です。
転勤するか、今の会社に残るか、転職するか。正解を誰かに決めてもらうのではなく、自分がどのような人生を送りたいのかから考えてみてください。




